日本映画『mentor』(台湾題『心靈導失』)が10月24日、2026高雄映画祭で台湾初上映を迎え、監督の吉田恵輔と磯村勇斗、末澤誠也が登壇した。綾野剛も出演する本作は115分で、台湾では輔12級に区分される。幼い頃の事故による別離を起点に、過ちの後をどう生きるかを問う。弓を射ること、ひざまずくこと、日常の身ぶりを通し、抽象的な罪悪感を俳優の身体へ引き戻す作品だ。
ひとつの事故の後、ふたつの生活が並行する
物語では重大な過失による出来事を境に、幼なじみの2人が別々の道を歩む。一方はアーチェリー選手となり、もう一方は労働と自責のなかで暮らす。そこに事故ですべてを失った男が現れ、穏やかに受け入れる姿勢で2人に近づき、進む方向を示してくれそうな存在となる。再会は単なる旧友同士の対面ではない。3人が同じ過去に対して、まったく異なる立場と期待を抱いている可能性がある。
そのため綾野剛が演じる「人生の導き手」が見る上での焦点となる。吉田監督は上映時の交流で、演技力に加え、観客が異なる感情を投影できる外見も重視したと話した。同じ人物が魅力的にも見え、恐怖や居心地の悪さも感じさせる。善意は信頼できるのか、受容に代償があるのかという問いは、人物関係から広がる。先に善悪を決めるより、その疑問を残す方が物語の設定が生む緊張に近づける。
アーチェリーも謝罪も、反復で作り上げる演技
磯村勇斗はアーチェリー選手役のために1年かけて練習し、10点の矢を放った際には歓声を上げて喜んだという。身体を鍛えることを、役が過去に向き合う方法と捉え、人物独自の気質を表したいと考えた。弓は職業を示すだけの小道具ではない。狙い、制御し、反復することが、人が自分自身をどう扱うかを読む別の入り口となる。結末を知らなくても、俳優の準備が鑑賞の手がかりになる。
末澤誠也は自宅の鏡の前でひざまずく動きを練習し、感情の違いで謝罪の姿勢がどう変わるかを探った。柔軟な身のこなしを共演者から折り畳み携帯電話のようだと冗談めかして言われ、撮影ではほかの俳優が笑いをこらえられないこともあったという。監督は説得力のない表面的な謝罪を、あえて喜劇に近い方法で扱う。「謝罪の動作をする」ことと「本当に過ちを引き受ける」ことの間に、見分けるための距離を残している。
吉田恵輔の創作の流れから、高雄での初上映へ
吉田恵輔は1975年埼玉県生まれで、塚本晋也作品の照明を担当していた。2006年の初長編『なま夏』(Raw Summer)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭で大賞を受け、その後『ヒメアノ~ル』『空白』『ミッシング』などを発表した。高雄映画祭は本作を、人間のドラマを扱う年間テーマ「抓馬人間」に位置付けた。大切な他者の喪失、反省、再出発に向き合う人物の困難も、この創作の流れにつながる。
公式作品ページに記載された初上映は、10月24日19時、高雄市立図書館総館7階の際会庁で、ゲスト登壇ありと表示されていた。この回はすでに終了している。磯村勇斗と末澤誠也の台湾での交流からは、撮影前の練習や現場のやり取りが見えたが、綾野剛は同行していない。このニュースから作品を知った人は、まず人物関係と監督の歩みを確認し、今後の上映発表を追うことで、イベントの記録と映画自体を分けて読み進められる。
『mentor』の高雄での台湾初上映に際して撮影された磯村勇斗と末澤誠也。