朝6時前に起床し、小さなおにぎり2個と味噌汁を食べる。それから15km走り、帰宅して仕事を始める。昼食は自家製のグラノーラ、夕食は17時と決まっていて、夜はさらに1時間歩き、19時半頃に帰宅、そして眠る。この生活リズムを、松浦弥太郎はもう15年ほど続けている。メニューを変えたことは一日もない。
松浦弥太郎は1965年東京生まれ。2002年に中目黒でセレクトブックストア「COW BOOKS」を創業し、2006年から『暮しの手帖』の編集長を務めた。その後もCookpad傘下のメディア「くらしのきほん」、UNIQLOとのコラボ企画「LifeWear Story 100」、DEAN & DELUCAのマガジンなど、数々の企画に携わってきた。現在はアパレルブランドPAPASのクリエイティブオフィサーを務め、新著『考えすぎずに、考える』を光文社より刊行したばかりだ。今回のインタビューは、ABC-MARTの企画「My Buddy 996」に連動するHOUYHNHNMのスピンオフ企画で、2026年8月10日に掲載。撮影はPAPAS CAFÉ 広尾店で行われた。
ランニングについて、彼は淡々とこう語る。「食事や歯磨き、入浴と同じレベルのこと」。もう20年続けているが、疲れることもなく、筋肉痛になったこともないという。ただ、ランニング時に履いているのは996ではなく、New BalanceのFresh Foam X 1080とFresh Foam X Moreを交互に履いている。同じ靴を長く履き続けると、足に癖のような偏りが出やすくなるため、履き替えることで体のバランスを保っているのだという。これは彼が数少ない、自ら「変える」ことを選んでいる部分だ。
New Balanceとの縁は、20代の頃、ニューヨーク73丁目のアパートに住んでいた時代に遡る。近所にあったFoot Lockerで、初めてのNew Balanceを購入した。当時のニューヨークには、New Balanceを大切なブランドとして扱う店が少なくなかったことを覚えているという。その一足は当時の彼にとって決して安いものではなく、必死に働いて手に入れたものだった。ある意味で「当時の貧乏な自分には似合わないもの」だったが、努力の末に手にした憧れだったからこそ、今でも変わらぬ愛着として残っているのだという。
「変わらないために、変わり続ける」
今回の撮影で彼が着用したのはCM996、標準的なグレーよりも少し深みのある新色だ。この一足への評価は率直だった。「2年くらい経つと、いい味が出てくる」。996のようなベーシックなモデルには安心感があり、どんな服にも合わせやすく、あまり深く考えなくていいと語る。
996のシルエットが何十年もほとんど変わっていないことについて、彼は「クラシックだから変わらない」という捉え方ではなく、むしろ逆の視点を語る。「ずっと同じでいることは、実は毎日変わっているということ」。自身の生活を例に挙げながら、外見上は変わらないように見えるNew Balanceのモデルも、実はミッドソールの素材など構造が常に更新されていて、その変化を続けているからこそ、今日も過去と同じ姿で人々の前に現れることができるのだと語る。彼はこの状態を「変えているのではなく、磨いている」と表現し、磨かないものはただ錆びていくだけだと言う。
この考え方は、彼の職人技への理解にもつながっている。彼が評価する手仕事の魅力とは、作り手の個性を表現するためのものではなく、使う人のため、日常のために作られた道具のことだという。他者のために心を尽くすこと――それを彼は「親切」であり「愛情」であると表現し、そうした物には何か命のようなものが宿っていると語る。また、旅先では自分で料理をすることにこだわっているといい、食材を買う際には店員に作り方を尋ね、次に訪れた時には「美味しかった」と伝えるという。こうしたやり取りの積み重ねこそが、買ったものを特別なものにしてくれるのだと彼は語った。
取材当日に着用していたNew Balance U996 3LEは、価格16,940円でABC-MARTにて販売中。「My Buddy 996」企画の商品の一つで、詳細はABC-MART各店舗または公式特設サイトにて確認できる。












