
999台限定は「稀少」だが、世界に1台だけというのはまったく別次元の話だ。Ferrari CZ26はまさにその「別次元」の存在だ。Ferrari Special Projects部門が、あるアメリカ人顧客のために製作した完全単一モデルである。オーナーは既製品を求めて列に並んだわけではなく、約2年という時間をかけ、エンジニアリングチームやデザインチームとともに、頭の中にあったイメージを一歩ずつ実際に走れる1台へと形にしていった。

CZ26はSF90 Stradaleをベースにしているが、その造形言語は完全に別路線を歩んでいる。多くのカスタムスーパーカーは派手なラインや大型エアロパーツを積み重ねる傾向にあるが、CZ26はその逆を行く。低く構えたボディ、無駄のない水平ライン、コックピットはまるでスペースカプセルのようにシンプルに仕上げられ、ボディカラーには液体金属のような質感を持つ「Argento Veloce」シルバーが選ばれた。全体の雰囲気は1970年代のイタリアン・インダストリアルデザインと未来感の間を漂い、あえて技を見せつけるのではなく、あえて抑え込んだような佇まいを感じさせる。

インテリアも同じ発想で貫かれている。ブラックのハイテクファブリックとカーボンファイバーパネルに、レッドのディテールを効かせた仕上げ。テクノロジー感は確かに存在するが、決して過剰には作り込まれていない。一方でパフォーマンス性能はカスタム化によって一切妥協されておらず、V8ツインターボエンジンに3基の電動モーターを組み合わせ、0-100km/h加速はわずか2.5秒、最高速度は328km/hに達する。数字の面でも、間違いなく正真正銘のFerrariだ。

こうした性能の数字以上に興味深いのは、Ferrari Special Projectsの仕事の進め方そのものだ。既存のメニューから色やインテリアを選ぶのではなく、2年という時間をかけて、1人のオーナーの想像を、二度と作られることのない1台の実車へと落とし込む。CZ26については、公式価格や納車時期などの情報は公開されていない。






