2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、多くの欧米アーティストがロシアでのステージを拒否してきた中、Kanye West はまったく逆の道を選んだ。近年、反ユダヤ的発言によって度々ボイコットの対象となってきたこのラッパーが、このタイミングでロシア公演を発表——しかもチケットはわずか数時間で売り切れた。
Kanye West(現名Ye)は8月17日月曜、10月10日と11日にサンクトペテルブルクのガスプロム・アリーナで公演を行うと発表した。BBC Newsの報道によると、収容人数7万人を誇るこの会場のチケット価格は9,000ルーブル(約78ポンド)から16万ルーブル(約1,394ポンド)まで幅があり、発売開始からわずか数時間で全券完売となった。
ロシア国会議員のVitaly Milonov氏はこの2公演について、このラッパーはいつものレパートリーではなく、ロシアの伝統曲を歌うべきだとの見解を示した。The New York Timesが伝えたところによると、彼は動画声明の中で「もしかしたらこれをきっかけに、彼はあの忌まわしい行いをやめ、まともな人間に戻るかもしれない」と述べた。
SoFi Stadiumからイスタンブールまで、炎上続きのカムバックツアー
ロシア公演は、Yeが今年行っているカムバックツアーの一環だ。ツアーは今年4月、カリフォルニアのSoFi Stadiumからスタートし、その後オランダやトルコでも公演が行われた。イスタンブール公演後、Ye本人は11万8千人の観客を動員したと主張し、史上最大規模のスタジアム公演の記録を更新したとしている。
アルバニア、スペイン、ポルトガル、そしてシカゴでの公演は現時点で予定通り進行しているが、ツアー途中、Yeの過去の反ユダヤ発言やナチスのシンボル使用をめぐる問題から、複数の公演がすでに中止に追い込まれている。今年4月、英国政府がYeの入国を拒否したことを受け、Wireless Festivalは2026年の開催そのものを中止した——彼は当初、このロンドンの音楽フェスで3夜連続のヘッドライナーを務める予定だった。ポーランドとスイスの公演も世論の圧力により中止となり、フランス公演は延期、イタリア公演は治安上の懸念から中止となった。今夏には、フロリダ州上院議員のRick Scott氏がTampa Sports Authorityに働きかけ、6月に予定されていた現地での2公演を中止させようとしたほか、サンアントニオ市長も7月4日のAlamodome公演の阻止を試みたが、いずれも実現には至らなかった。
「ヒトラーを許せ」発言からナチス自称まで、反ユダヤ問題の変遷
Yeの反ユダヤ問題は2022年に遡る。当時、彼はSNS上で一連の差別的発言を行い、InstagramとTwitterのアカウントが凍結されたほか、弁護士や所属事務所、レコード会社が次々と契約を解除。BalenciagaやAdidasといったファッションブランドとの提携も終了した。当時、彼は複数のインタビューで謝罪を拒否し、ユダヤ人は「ヒトラーを許すべきだ」とまで発言していた。2023年になってようやくユダヤ人コミュニティに公式に謝罪し、翌年にはその行動をアルコールのせいだと主張した。
その後も彼の長年にわたる反ユダヤ的言動を訴える訴訟が相次いだ。ある元従業員は、彼が「ユダヤ人たちが結託して自分を潰そうとしている」と発言したと主張。別の元従業員は、彼が職場で反ユダヤ的発言をし、ヒトラーを称賛したと訴え、彼はこれをめぐり和解金を支払ったとされる。2024年にはさらに別の元従業員が、彼が従業員の前で公然と反ユダヤ的な立場を示したと告発した。2025年初め、彼は複数の問題発言を投稿し、以前ユダヤ人コミュニティに行った謝罪を撤回した上で、自らを「ナチスだ」と宣言。数日後にはXで「さらに考えた結果、自分はナチスではないと気づいた」と発言を翻したが、それからほどなくして、彼のアカウントにはナチスのシンボルをあしらった衣服が再び登場した。今年1月、彼はThe Wall Street Journalに全面広告を掲載し、過去の反ユダヤ的発言やその他の問題発言について謝罪。その中で自身の行動をメンタルヘルスの問題と結びつけ、責任を取り治療を受けると表明した。最新アルバム『Bully』は今年3月、YouTubeでのライブ配信という形で発表された。






