香港のWKM Galleryで10月31日まで開催中のSoh Souen個展「My tender passion, tender patience」。最終週は、小さな問いから見始めたい。まぶた、唇、鎖骨、衣服の端だけが描かれているとき、私たちはどう一人の人間を捉えるのだろう。日本人作家による香港初個展は、パステルのシリーズ《Again and Again》とパフォーマンス記録、協働映像を組み合わせる。全身の肖像で身元を説明するのではなく、身体の断片、触感、呼吸を入口にする展示だ。
小さな絵の列が、足を止めさせる理由 作家提供の会場写真では、小品が白壁に横一列に並び、それぞれの間に大きな余白がある。目、口元、肌は別々に現れ、歩くことで自分なりの見る順序ができる。切り刻まれた証明写真を元に戻すわけではない。別の写真では、閉じた目の絵が角の壁に一枚掛かり、隣の窓光と通路が歩調を緩める。ここで述べる空間の観察は公式写真に基づくもので、本誌の現地取材ではない。
白壁に横一列に並ぶ小品。それぞれの間に余白を設けている。 角の壁に掛かる閉じた目の絵と、隣の窓光、通路の対照。 《Again and Again》では、手で直接画面に触れながら、肌や身体に近い衣服、装身具をパステルで描く。柔らかな配色だけでなく、粒子、擦る行為、表面の質感も関わる。鎖骨と細いネックレスの絵では、広い暖色の肌理とごく細い金属の線が並置される。最初に色や境界が見え、そのあとで身体が読み取れる。その距離の変化を味わうことは、すぐに「似ているか」を判定するよりも大切な見方になる。
鎖骨と細いネックレスのパステル作品の展示写真。暖色の肌理と細線が並ぶ。 絵肌の触感から、落とせない一個の卵へ 《Eggsercise》は記録映像として紹介される。生卵を身体のくぼみに置いたり、自分と他者、壁、家具との間に挟んだりし、落とさないようゆっくり動き続けるパフォーマンスだ。簡単な規則なのに、わずかな調整にも重みが生まれる。壊れやすいものを守る方法は、身体と周囲との関係も変えていく。2022年の初発表以来、異なる形で継続されてきた作品であり、記録上映を閉幕まで毎日の実演と取り違えないようにしたい。
映像《N: 20.04.26–04.05.26》は、キーウに住む仮名Nとの協働で、バビ・ヤールで撮影された。画廊の説明は、空気や呼吸を、土地の記憶やすべては語れない経験に結び付ける。ただし、画面の人物に存在しない告白を補う必要はない。会場写真ではモニター、ピンクのカーテン、椅子、隣の絵が別のリズムを作り、映像の前で時間を過ごすよう促す。画面内の字幕は作品上映の一部で、写真に後付けされた透かしではない。
モニター、カーテン、椅子からなる映像鑑賞エリア。字幕は上映作品の一部。 残りの日程をどう組む? 会場は香港・黄竹坑道62号Coda Designer Centreの20階。火〜土曜11〜19時に開き、日曜、月曜、祝日は休廊する。9月5日のオープニングは終了済みで、その際の作家在廊予定を10月28〜31日の面会イベントと読み替えることはできない。臨時の変更や展示状況は画廊の展覧会ページ 、または+852-2866-3199で確認したい。現行情報には入場料金の明記がなく、料金や予約規則を推定してはいない。
少し離れて白壁や窓辺、映像空間への配置を見たあと、近づいて小さな肌の断片がパステルの画面になる様子を見る。二つの距離を行き来するのがおすすめだ。見覚えのある身体の細部から、一言では説明しきれない生の経験へ、見る行為が忍耐を要する関係に変わっていく。10月31日までの訪問は時間を確認し、映像にも余裕を残したい。代表作一枚を撮影するだけより、異なる媒体のつながりが見えてくる。