一つの工業ビルの中で、三つの見方を一つのルートにできる。香港・田湾のGallery EXITでは2026年10月17日から11月21日まで、鄺詠君の「Good Morning, Sweet Dreams – Time Blindness(日出|晚安—延促同時)」、陳翊朗の「Two Kinds of Protection(兩種保護)」、李寧の「No Ground」という三つの個展を同時開催している。鄺の展示は3階、後の二つは13階。同じグループ展ではないが、時間感覚、守護する姿、記憶の再構成から比較の入口が見つかる。
鄺詠君:飛行と遠方が昼夜を曖昧にする 鄺詠君は「Good Morning, Sweet Dreams」シリーズを継続し、飛行、遠くの家族や友人、時間感覚を油彩に取り込む。遠方へ移住した人々を訪ねたい気持ちと、母親が故郷の海南島から送った嵐の前日の夕日写真が創作の手掛かりになった。飛行機に乗ることに結び付いていた不安は、時間、記憶、感情への考察へと移る。英題Time Blindnessは時間の経過や長さを捉えにくい感覚を示し、中国語題の「延促同時」は長い時間と一瞬を完全には切り分けない。
大きな作品の展示写真には、青紫の空、ヤシの木のシルエット、オレンジ色の枠が重なる。実体の壁を持たない入口のような枠が、風景に遠景と室内を思わせる境界を同時に与える。別の「Midnight Sun 04:00」は2025年の油彩・キャンバス作品で、39×39cm。左側の低い太陽から、淡紫の空と下の雲にオレンジやピンクの光が広がる。大作と小品で尺度が変わり、展示作がすべて2026年制作ではないことも分かる。
鄺詠君「Midnight Sun 04:00」、2025年、油彩・キャンバス、39×39cm。 陳翊朗:水墨と油彩で描く二つの保護 陳翊朗にとってGallery EXITで三度目の個展となる「兩種保護」は、水墨と油彩を並べ、仏教や西洋の宗教的な人物を用いて独自の図像世界を築く。作家は二つの素材を異なる創作感覚に結び付ける。技法では、水墨が線やにじみを積み重ねる一方、油彩は塗り、拭き取り、洗い落とすことでも層を作れる。まず白黒の線の密度と、色が身体を背景からどう分けるかを比べ、その後で人物の象徴を読むことができる。
展示写真の白壁には、人物を密な曲線が囲む五点の白黒の正方形作品が並ぶ。対して2026年の「Michael(米迦勒)」は80×60cmの油彩・キャンバス作品で、翼のある身体、直立した剣、頭上から放射する光をオレンジ赤と青の対比で浮かび上がらせる。二つの違いは色の有無だけでなく、輪郭と空間の組み方にもある。前者では細部を目で巡り、後者では中央の人物へと視線が戻る。形式から宗教図像に入る見方だ。
陳翊朗「兩種保護」展示風景。五点の白黒の人物像が白壁に並ぶ。 陳翊朗「Michael(米迦勒)」、2026年、油彩・キャンバス、80×60cm。 李寧:記憶を版画の断片にし、新しい世界へ 李寧の「No Ground」は、記憶を変化、結合、書き換えのできる素材として扱う。古い版と新たに刻んだ版を凹版・凸版で刷り、その印刷物をコラージュしてエアブラシを加え、文章を通じて映像の物語へ展開する。同名の2026年作品は200×120cmで、動物の頭、触手、円形模様、幾何学的な平面が縦長の画面に重なる。会場の大小の作品と合わせると、部分的な図柄がより大きな架空世界へ育つ様子を観察できる。
李寧「No Ground」展示風景。工業的な構造を残した空間に大小の作品が並ぶ。 李寧「No Ground」、2026年、エアブラシ、凹版、凸版、キャンバス上のコラージュ、200×120cm。 Gallery EXITは香港仔・田湾の興和街25号、大生工業大廈にあり、3階と13階の展示エリアをそれぞれ確認したい。通常は火曜から土曜12:00~18:00で、祝日を除き、別途予約による訪問もある。日曜は通常開廊日に含まれない。電話は+852 2541 1299。公式の開催中展示と訪問情報 を先に確認できる。色彩、線、コラージュという三つの軸で巡れば、一度の訪問で三人の画面構成を比べられる。