コロナ禍のピーク時から時価総額が3200億ドルも吹き飛び、株価が過去最低水準まで落ち込んだ企業に、評価額を一気に3割も引き上げる買収提案が届いた。それでも首を縦に振らなかった――これが今のPayPalが置かれている状況だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道によると、StripeとプライベートエクイティのAdvent Internationalは今年7月、PayPalに対し1株60.50ドルでの買収を提案した。これは全体の評価額にして530億ドル規模の話だ。当時PayPalの時価総額は一時400億ドル程度まで落ち込んでおり、パンデミック期のピークと比べると実に3200億ドルも目減りしていた。それでもPayPalの取締役会はこの価格を「まだ不十分」と判断し、承諾しなかった。
交渉はこれで終わったわけではない。両者は現在、さらに高い1株あたりの価格について協議を続けているとされ、順調に進めば今後数週間以内に正式合意が発表される可能性もある。ただし、交渉がいつ破談になってもおかしくない状況だ。ロイターの過去の報道によれば、買収が実現した場合、StripeとAdventがそれぞれ半分ずつの株式を保有し、共同でPayPalを所有する形になる見込みで、PayPalの事業を分割する計画はないという。つまりこれが実現すれば、Stripeは一気に世界有数のオンライン決済大手へと躍り出ることになり、取り扱う年間取引額は3.7兆ドル規模に達すると見られている。
今回の買収話はタイミングも興味深い。PayPalは今年3月、新CEOにEnrique Lores氏を迎えたばかりで、就任後は会社を「チェックアウト」「Venmo」「決済・暗号資産」の3事業部に再編したところだった。買収が成立した場合、この再編されたばかりの組織体制がStripeの傘下でどう扱われるのかは現時点では未知数だ。ロイターの分析では、もし合併が実現すれば、StripeはVenmoやPayPalのチェックアウトシステム、暗号資産機能を自社の製品ラインに組み込むことができ、同時にVisaやMasterCardへの依存度も下げられるとみられている。
現時点で両社とも合意内容や最終的な価格については明らかにしておらず、交渉が実際に成立するかどうかは今後の続報を待つ必要がある。






