創業30年、ニューヨーク・タイムズ紙に「札幌で外せないカルト的人気カフェ」と紹介された店が、初めて日本を飛び出す。選んだのは東京でも台北の中心部でもなく、台湾・南投県草屯の九九峰の山中だった。この立地選びこそ、「森彥 九九峰」という店の最大の見どころと言える。
MORIHICO. 森彥は1996年、札幌の路地裏にある木造民家からスタートした。創業者・市川草介氏は北海道の雪景色が持つ静けさと、職人気質のこだわりを一杯一杯のコーヒーに込め、熱狂的なファン層を築き上げてきた。日本国内には現在13店舗を展開している。台湾のラベンダーの森(薰衣草森林)グループが長年かけて誘致を重ね、実現したのが「森彥 九九峰」。ブランド全体で世界14店舗目、そして創業30年で初となる海外拠点だ。
空間デザインは市川草介氏自らが手がけ、「雪墨(Setsuboku)」と名付けた。北海道の積雪が描く輪郭線と、東洋の水墨画における「余白」の美学を重ね合わせたコンセプトだ。店内には白木や自然石、柔らかな曲線が多用され、大きな窓からは九九峰の森の景色がそのまま室内へと流れ込む。2階には屋外テラスがあり、山並みを一望できる店内随一の人気席となっている。
コーヒーそのものにも台湾向けの調整が加えられている。札幌本店の定番は深煎りだが、今回市川氏は台湾限定ブレンド「森之雫 Taiwan Edition」を新たに配合。中浅煎りに変更し、エチオピアやコロンビアなど5種の豆をブレンドした。口に含むと柑橘系の香りが広がり、余韻には台湾の山林でよく見られるウッディなニュアンスをあえて残している。スイーツも北海道の技と台湾食材を組み合わせた構成だ。ラベンダー香るタロイモクリームのパンケーキ、季節のフルーツを使ったマンゴーフルーツサンド、さらに日本からそのまま持ち込んだ「綿雪チーズケーキ」と「月光チョコレートケーキ」も並ぶ。
オープン期間中は店内で2つの展示も同時開催され、7月16日から9月15日まで無料で公開されている。ひとつは「森彥タイムズ」と題し、ブランド30年分の美学スケッチや年季の入った道具、映像資料を初公開。もうひとつは日本人写真家・野呂圭一氏による「銀のレースがほどける朝」で、雪景色や光と影、余白を捉えた作品群が「雪墨」空間の世界観と呼応する。
森彥 九九峰の住所は南投縣草屯鎮藝術路258號、ラベンダーの森・南投九九峰エリア内。営業時間は8:30〜17:30、ラストオーダー(最終入店)は16:30。












